目次:

トップページ

入会案内

会報サンプル

研究誌

学会のあゆみ

学会の活動

マザーグース・ライブラリー

はじめて学ぶ方へ

リンク


English Pages:

About Mother Goose Society of Japan























第14回 全国大会
目   次
研究発表1 研究発表2 研究発表3
研究発表4 講    演 展  示
 
研究発表1. 白秋をめぐる固定観念    高屋 一成

参考画像・都立多摩図書館所蔵『赤い鳥(複製版)』大正9年1月号
   以前、白秋の訳業について、自分が書いたことの訂正をしたい。「いっちく、たっちく…("Hickory, dickory, dock")」は、 初訳では『赤い鳥』大正9年1月号に「カッタ、コット…」と擬音を使い掲載された。『マザーグース初期邦訳本復刻集成』 (エディション・シナプス、2011)の「解説」に、このライムの訳は白秋訳の「草稿ノート」には掲載されていないと書いた。 だが、自分で活字起こしをして『マザーグース研究』第8号(2008.3)に発表した「白秋『まざあ・ぐうす』草稿ノートの活字起こし」 を後に読み返して、実は「カッタリ、コットリ…」という訳で掲載されていることに気がついた。
   また、故平野敬一先生が『マザー・グースの唄』(中公新書)の中で、白秋の『まざあ・ぐうす』に対する同時代の反響が ほとんど見当たらないと書いておられたが、甲南大学の中島俊郎教授が、吉田正俊著『異説大正期の文学』(共立女子大文芸学部、1964) の中に同時代人として白秋訳を評価した文章を発見された。丁寧に文献にあたることで、白秋がどういう翻訳者、詩人、人物であったのか、 本当の姿が少しずつ現れてくる。
目次へ
研究発表2. Ladybird BooksのNursery Rhymes絵本の年代比較    鈴木 直子

「Peter, Peter, pumpkin eater」の三つのイラスト
   Ladybird Booksから、版を重ねながら長年発行されている、3冊組のNursery Rhymes絵本がある。まず 1965年から1967年に発行された、A first ladybird book of nursery rhymes、A second ladybird book of nursery rhymes、 A third ladybird book of nursery rhymes。次に1984年のHumpty Dumpty and other nursery rhymes、 Jack and Jill and 〜、Old King Cole and 〜。さらに1994年の Humpty Dumpty and other nursery rhymes、Hickory Dickory Dock and 〜、 Incy Wincy Spider and 〜。1960年代版と1984年版、1994年版の三者のイラストを比較する。
   "Peter, Peter, pumpkin eater"のイラストは、1960年代版では、カボチャを檻のようにくりぬいて不満そうな奥さんを 閉じ込めたピーターがお気楽にパンを食べている。1984年版のピーターは野ネズミで、奥さんは楽しそうに窓からのぞいており、 子ネズミもいる。1994年版の上の絵ではカボチャの中の怒った妻にいそいそと紅茶を運ぶピーター、下の絵では別の妻と読書に親しむ ピーターが描かれ、三者三様である。一方、"Diddle diddle dumpling"、"See-saw, Margery Daw"、"To market, to market, / To buy a fat pig"などでは、 1960年代版と1984年版のイラストは20年の隔たりにも関わらず非常によく似ているが、1994年版では全く異なる絵になっている。
   また、"Jack Horner"、"Lucy Locket"、"Miss Muffet"は1994年版では有色人種の子どもが描かれており、 この間に社会意識の大きな変化があったことが伺われる。
目次へ
研究発表3. ラベンダーブルーについて(その色の魅力、ブルーを中心に)    寺前 早苗
ディズニー映画「シンデレラ」のDVD
   「Lavender's blue」の唄は、2015年のディズニー映画「シンデレラ」では至るところに様々な調子で使われ、基底音となっている。 下働きのような仕事をしているシンデレラは、淡い水色の服を着ており、この色は、「Lavender's blue」の唄の中で歌われている、 労働者階級、貧しさを象徴していると考えた。
   「青」には、様々な色調があり、ラベンダーの花の色も様々な色合いである。お回ししたラベンダーの花の写真と、 資料として配布した、様々な「青」の色紙を比べてほしい。映画のクライマックスで、シンデレラは魔法使いに、濃い青のドレスを 着せてもらって舞踏会で王子と踊る。このはっきりした色は、近い将来の幸せとお金に不自由しない生活を表していると思う。
   「Lavender's blue」の唄は求婚歌でもあり、「シンデレラ」の映画は、「Lavender's blue」 の唄を知りつくした人たちの手で作られていると感じた。※画像はAmazonアフィリエイトリンク(管理人@フィドル猫)
目次へ
研究発表4. 英米の新聞雑誌に登場したマザーグース    弘山 貞夫

「off the mark」に登場するHumpty Dumpty
   主に1980年代から2000年代初めにかけて集めた用例を紹介。National Geographic , April 2003 には、 「Rain, Rain, Go Away」という見出しのもとに、動物愛護家Jane Goodall たちがコンゴの森で雨宿り。「早く、雨さん、行ってくれ」 という見出しが効いている。写真家のMichael“Nick” Nicholsがパチリ。彼曰く、“She’s such a strong person, a crusader, but here she looks vulnerable. I like it because it shows a side of Jane we don’t usually see.”
   ここ10年余り、TIMEなどにも余り用例が見つからない。その理由は何なのか、英米の読者にもマザーグースの詩句が 廃れつつあるのか、それとも英米以外の読者に配慮してわざと避けているのか、今後の用例の頻度が問われる。
目次へ
 
講演  英国にマザー・グースのルーツを訪ねて
  −日本のわらべうた衰退考−

    講師:楠本 君惠 法政大学名誉教授

チャップブックの一例。左の画像は裁断前、右の画像は「王様と靴屋の物語」表紙

    マザー・グースとの出会いは、北原白秋の『まざあ・ぐうす』(角川文庫)である。愛読し、「いっちく たっちく」 「ねろちゅば、ねろちゅば」など、白秋訳の言葉の響きに魅せられた。また、「ジャック・スプラット」の唄にみられるように、 二人の間のお皿が「きれいになる」までには、夫婦がお互いに嫌いな部分を交換したはずだが、そこが省略されている。 ここにマザー・グースの本質が見える。
    白秋は、新しい「童謡」の意味を創造したが、日本古来の「わらべうた」は廃れる一方である。明治時代に 『諸国童謡大全』(春陽堂、1909)という3万篇も収録された本が出版されているが、それは、「消えてしまう前に記録するため集めた」 ものであった。
    一方で、英国のマザー・グースはなぜ生き残っているのだろう、という疑問を解きたいと思い、 マザー・グースの実態を知り、起源を探るという壮大な目標をたてて、1993年子連れでイギリスに留学した。初めの頃は、 チャップブックについての 研究書を読んだりしていたが、どうもやりたいことと違うと思っているとき、アンティークの店で、 ブラックバードをかたどった「パイバード」に出会った。これを買い、イギリス人の生活に寄り添ったナーサリーライムを実感した。
    まず実態を知るために、アンケート調査を計画した。アンケートに答えてもらうには、 ある程度相手と親しくならないと協力してもらえないので、時間がかかった。調査に使うライムは、当時手に入った17冊の絵本のうち、 8冊以上に掲載されているものから上位65篇を選んだ。これらを留学していたケンブリッジ市内の小学校2校、幼稚園、 託児所で答えてもらった。(※ 詳しくは楠本先生の著書『まざあ・ぐうす マザー・グース』p.206以降をご参照ください。)
    これだけ今も愛されている唄の起源を知る手がかりとして、チャップブックについて調べた。チャップブックは、 版元で印刷され、チャップマンの手によって各地で売られた。ロンドンだけで一時250軒ものチャップブックの版元があり、 それぞれに抱えられた、無名の作家、詩人、彫刻家(挿絵画家)、作曲家がいた。チャップマンは、各地でチャップブックに掲載された唄を歌い、 お話を語りながら売り、行った先で聞いた唄や話を持ち帰った。版元はそれをまた新しい作品として本を作った。「庶民の文学」が、 絶えず文字にされ洗練され続けたのだ。「消えてしまう前に記録する」ために集められて、初めて文字になった日本の「童謡」との大きな違いは ここにある。これらの作品は、日本人が「英文学」として学ぶものが「上層」とすると、「下層」にあたり、「street literature」という。
    英国では、19世紀に中産階級が台頭し、絵本の需要が高まり、内容は、中産階級の子どもが好むものが求められるようになる。 メロディーも印刷されるたびに洗練されていく。たとえば、ウォルター・クレインのThe Baby's OperaThe Baby's Bouquet の 2冊の絵本の楽譜は、「LC」(※ ウォルターの姉、ルーシー・クレイン)によって編曲されている。
    このように、イギリスのマザー・グースは、早くから文字にとらえられ、それを支える中産階級がいた。 ひるがえって、日本のわらべうたは、文字になるのが遅かった上、その文化を支える中産階級がいなかった。また、 日本のわらべうたはほとんどが遊びと結びついており、遊びが消えるにつれて唄も消えていった。大正時代の雑誌『赤い鳥』における、 白秋が熱心に指導した創作童謡と、地方から募集して掲載しただけの「地方童謡」に対する態度の違いも、わらべうたの衰退に影響したかもしれない。
目次へ
 
展 示

展示1
展示1・中央手前は、弘山氏の教え子たちが、イラストと訳を付けたマザーグースを、当時勤務していた高校の図書館司書が製本してくれた、 世界で一冊の本



展示2
展示2・左手前から中央は、楽譜の出ているマザーグース本。中央奧は、ディズニー映画「シンデレラ」のパンフレット



展示3
展示3・中央から右の4冊は、講演者・楠本君惠先生の訳書・著書。右上から時計回りに『翻訳の国の「アリス」』(未知谷、2001)、 『まざあ・ぐうすマザー・グース』(未知谷、2010)、『不思議の国のアリス』(訳書。キャロル作、論創社、2006)、 『金色の影』(訳書。沢登君恵名義。ガーフィールド作、ぬぷん、1981)


展示4・関西支部勉強会で読んでいる「TTPSB」復刻版を含む別冊解説「Nurse Lovechild's Legacy」
展示4・関西支部勉強会で読んでいる「TTPSB」復刻版を含むセット。中央奧が別冊解説「Nurse Lovechild's Legacy」



展示5・関西支部勉強会記録
展示5・関西支部勉強会記録集。左が2016年度発行の2015年記録、右が2015年度発行の2014年記録
目次へ
 

※このページの記録・写真等は、HP管理人@フィドル猫がまとめました。(2016.12)

大会講演・研究発表一覧


トップページへ戻る