目次:

トップページ

入会案内

会報サンプル

研究誌

学会のあゆみ

学会の活動

マザーグース・ライブラリー

はじめて学ぶ方へ

リンク


English Pages:

About Mother Goose Society of Japan



























会報サンプル

会報No.133  2001年1月

マザ−グ−ス学会会報

目次
全国大会報告 Tommy Thumb's Pretty Song Book (1744)を読む (5)
マザーグース国漫歩(続3) マザーグース日記(66)
マザーグース用例コーナー 関西支部例会報告

<全国大会報告>

  12月3日(日)追手門学院大学で行われた第6回大会が、盛況の内に終了しました。会員31名、一般13名、合計44名の参加でした。大会の模様を編集部でまとめました。

三宅興子先生講演
「マザーグースの絵本化―『ハバードばあさんといぬ』を中心に」
  午後1時半から始まった講演、『ハバードばあさんといぬ』の絵本がどんな変遷を辿ったかを、イギリスの風俗文化史にも触れ、 実際の絵本を黒板代わりの大スクリーンに映しながら、よどみなく解説され、あっという間の1時間半でした。
  前置きとして、おびただしい数のマザーグース絵本が英米で出版されている中で、 特に一つの唄で一冊の本になっている唄として、多い順番を挙げられた。三宅先生の「カンピュータ」では次のようになるだろうと。

1."A Apple Pie"
2. "The Death and Burial of Cock Robin"
3. "The House that Jack Built"

  1は、アルファベットを教えるため、2は鳥の図鑑として、3は長いので絵本にし易かったからという理由。そして、4番目に多いのが今回取り上げる『ハバードばあさんといぬ』の絵本だろうと。

  さて、本題の"Old Mother Hubbard and Her Dog"の唄について。Mother Hubbardという名前は以前からあったが、絵本になってから広まった。この唄の元唄とされる "Old Dame Trot and Her Comical Cat"という絵本が1803年に出版されている。イヌとネコが決闘の後仲直りするという筋書きで。

  J. Harris が、"The Comic Adventures of Old Mother Hubbard and Her Dog"というタイトルで、1805年に出版されたのが初出とされている。この絵本は数か月で1万部を売り尽くすベストセラーになったという。この唄は、ウイリアム4世の愛人だったと伝えられるサラ・キャサリン・マーティンが作者だという説がある。
  1820年頃Kendrew が出版したチャップブックにより、この唄のイメージが出来上がった。人気のあったチャップブックは、すぐ廉価版が出されたりして流布した。1874年出版のWalter Crane 作では、イラストに動きが入ってきた。靴や洋服もおしゃれになり、1870年代の美的センスが分かる。イヌがネコに食べさせる場面では、ちゃんとエプロンをしていたり、フルートを吹くイヌがそのページの主人公になっていたりと、より精密かつ面白さが進化している。印刷術の発達に伴い、絵本の大型化、カラー化もされた。
  結論として、死んだ振りのイヌが片目をあけていたり、エプロンを掛けたハバードおばさんがメガネをかけていたり、太ったイヌが足置きの上で逆立ちしていたり、と時代の流れとともにイラストも発展してきたことがわかる。また、詩句とは別に絵本によるイメージの伝承性を感じさせる。

  質疑としては、他に人気のあった絵本は、Jack Horner, Jack & Jillだろうとか、詩句でwig とjigの韻があるが、jigという踊りは廃れてきていたが韻を踏むために使われているし、「カツラ」と「舞曲」というイメージの落差が面白いのだろう、などが出された。

<研究発表のまとめ>

(1)鳥山淳子さん 
   「ビートルズとマザーグース」
  ビートルズの歌10曲を取り上げ、その中の歌詞にマザーグースの引用や影響がどのようにあらわれているかを解説。
  たとえば、"I am the Walrus"という曲からは、7つのマザーグースを読みとることが出来るという。See how they run は、Three blind mice, eggmanはHumpty Dumpty, Pretty little policeman in a row はMary,Mary, quite contrary, と言った具合に。
  明らかな引用だけでなく、フレーズの背後にあるナンセンスさや可笑しさにマザーグースのエコー(響き)があるという。このあたりはネイティブの感覚を確かめてみたい。

  時間が無くて、半分しか解説と歌が聴けなくて残念でした。

(2)松村恒さん
   「マザーグースの語りの文法」
  言語学、心理学、哲学の面から、言葉の形式と概念にはなんらかの関係があるのではないか、というのが出発点。音楽ではその形式に一定のルールがある。
  小澤俊夫氏はそれを昔話の分析に利用した。昔話と音楽の関係は比喩的であるが、マザーグースは音楽の面ももっているので、もっと関係が密であるから、それをマザーグースに応用してその「語りの文法」を解き明かそうというもの。
  例として、Walter Crane の "The Baby's Opera" から、Hush-a-bye babyのメロディには、垂直的転回と繰り返しがあり、しかも垂直的転回の部分には the cradle will fall とあり、歌詞も垂直的転回を示している。My Pretty Maid には繰り返し、Sing a song of sixpence には、垂直的転回と水平的転回、Ye frog & ye crowには複合型繰り返し、というように。

(3)夏目康子さん
   「 "Mary, Mary, quite contrary"の唄について」
  "Mary, Mary, quite contrary"の唄を取り上げ、その詩句とイラストの変遷を辿った実証的な報告。この唄の文献初出は 1744年の"Tommy Thumb's Pretty Song Book" 。

Mistress Mary,
Quite contrary,
How does your
Garden grow?
With Silver Bells
And Cockle Shells,
And so my Garden grows.

  18世紀の集成には、花の名前ではなくcuckolds (寝取られ男) となっているものがある。イラストにも角の生えた男性が描かれていて、大人の世界を歌っている。 19世紀に入り、初めてpretty maids all in a row という詩句が登場した。1858年出版の "Old Nurse's Book"by Charles H. Bennett には、花弁の上に女性の上半身が描かれ、この流れが今世紀につながってきている。
  20世紀になり「つむじ曲がり」というイメージとはほど遠く、明るい感じのイラストも登場した。異色(本来の唄にはあっているのだろうが)なのは、 Charles Adams やPaula Rego の描くそれぞれ病的、死の不安を暗示するようなイラスト。また、マザーグースの持つ毒を抜き取り、道徳的・教訓的な「改革版マザーグース」の例も紹介された。

  もう一度、手許にあるマザーグース集成をあれこれ読み比べてみたいと改めて感じた。皆さんはいかがでしたか。

(4)安藤幸江さん
   「マルチメディア教材とThommy Thumb's Pretty Song Book
  追手門学院大学の研究プロジェクト(経費は1500万円)により作られたマザーグースのマルチメディア教材。
  12の唄を選び、その歌詞、語句の意味、歌の解説などを加え、ビデオ、テープ、絵本、文献、楽譜などのメディアをデジタル化して、パソコンで自由自在に見ることが出来る。版権料も払い、専門業者に依頼して制作した。ただし、校内だけで、インターネット上には公開されていない。
  たとえば、London Bridge の項目をクリックすれば、その動画や音声、詳しい「オックスフォードナーサリーライム辞典」の解説、いくつかの絵本の違ったヴァージョンなどを学習できる。

  参加者は、フォーラム教室のパソコンで実際に使い、おもいおもいに体験しました。操作に不慣れな人には、助手の2人が回って手助け。こういったマルチメディア教材が市販されれば便利なのだが、と思ったのは私一人でしょうか。世はデジタル、インターネットの時代、古い文献資料などを今のうちにデジタル化して後世に伝える必要があるのでは・・・。
  ともあれ、皆さん昼休み、そして講演後のマルチメディア体験の時間を一杯使い、パソコンに向かいマザーグースの世界を堪能していました。    

 (弘山貞夫 記)


マザーグース国漫歩(続3)
                            藤野紀男
  トムとジャッキーのキャロライン夫妻が今回のホストファミリーで、レスターの南南西約13マイルのウレスソープ村に住んでいた。ラグビーに近い、大変静かな村で、お宅の近くにはパブが3軒と、郵便局兼雑貨店ぐらいしか店がなかった。
  お二人は大変親切で、何回か車で連れ歩いてくれたが、次第にマザーグースファンになってしまった。お二人と一緒に出掛けたマザーグース・ハントも懐かしい想い出の一コマとなっている。

デリの "Curds & Whey"
  イギリスのイエローページをインターネットでサーチしたときに、Curds & Wheyという名の店がイギリスにたった一軒だけ存在していることを知り、ぜひ尋ねてみたいと考えていた。
  一級幹線道路のA5がレスター州からウォリック州に入った直後にアサーストンという町がある。その町中の教会の近くの路地にCurds & Wheyという小さなデリが見つかった。残念ながら改修工事中で、どんな風の店なのかという感じすら掴めなかったのは残念至極だ。もっとも、普段でも日曜日には店はオープンしていないとのことだが。

子供洋装店の "Jack & Jill"
  北西に向かうA5道路からA453にそれて南西に向かうと、バーミンガム郊外のサトンコールドフィールドへ行き着く。ウォールソール通りがなかなか見つからず、ちょっと往ったり来たりして、ガソリンスタンドで聞いてみたらすぐ横にあると言われてしまう。
  小さな子供用洋装店なのだが、にぎやかなショッピング外から離れているからだろうか、日曜閉店であった。


マザーグース用例コーナー

●鈴木直子:
[No.15-2000]
Star light,star bright(お星さま、一番星よ)
出典:ジャクリーン・ウィルソン作『バイバイわたしのおうち』p.161(偕成社、2000)
原書:The Suitcase Kid, by Jacqueline Wilson,(c)1992

<引用文・邦訳>
  ケイティーは、…心配そうだった。
「アンディー、本気じゃないわよね、そうでしょ? まさか、ほんとに真夜中に外へ出ていったりしないわよね。ねえ、ラディッシュのこと、いろいろいったけど、あんたをいやな気分にさせてやろうと思っていったつくり話よ、ほんとのことじゃないわ。」
「ほんとになってるかもしれないでしょ。」
  わたしはそういうと、コートを着て、首にマフラーをまいた。
…(中略)…頭をぐっとそらして北極星をながめていると、なみだが出てきた。
  わたしは、ねがいごとの歌をそっと口ずさんだ。

  きらきらひかる、お星さま
  わたしがみつけた、いちばん星
  どうぞおねがい、かなえてね
  今夜の最初のおねがいを、
  きっと、きっと、かなえてね

「ラディッシュがみつかりますように。うまくひろいあげる方法をみつけて、ラディッシュをとりもどせますように。おねがいです、おねがいです、おねがいです。」

<ストーリーとコメント>
  主人公のアンディーは10歳の女の子。両親が離婚したので、家がなくなってしまった。それぞれの再婚家庭にかわりばんこに泊まっているが、自分の居場所がない。今まで一人っ子だったのに、急に義理の兄弟姉妹ができたけれど、母の再婚先の末っ子ケイティーとは同い年だが、いつも嫌味を言われていて、アンディーはうさぎのマスコット・ラディッシュを心の支えにしている。
  母の家ではケイティーの部屋に同居させられているが、ある晩、アンディーは失くしたうさぎのマスコットを探しに出かける。その時、つぶやくのがマザー・グースの願いごとの唄。
  この作品は、イギリスの子どもたちが選ぶ「チルドレンズ・ブック賞」を受賞しているだけあって、カラッとした文体で章だても短く、読みやすい。 

●藤野紀男:
Mary had a little lamb
  「メリーさんの羊」の唄を留守電がうまく働くか試すのに歌う、というものです。
"Right," he said, when he'd recorded a message on a brand-new tape on Angela's machine. "I'd like you to go into the hallway, ring this number, and leave a message on the machine. Then I'll call you back and give you further instruction."
"What'll I say?"
"'Mary had a little lamb' is a popular choice."
Half an hour later he had established to his own satisfaction that there was nothing wrong with the answering machine, elderly though it was.
But if you removed the tape before playing the message, or after saving it, then the light continued to blink....
"Plots and Errors" by Jill McGown ,1999

●反町厚子:
  新聞のタイトルに使われた用例です。
Old Mother Hubbard

  Japan Times (Dec.10, 2000)の記事のタイトルが、"Old Mother Hubbard had a better deal than this" とありました。Amy Chavez さんが日本の狭い住宅事情を嘆いている記事です。友人の若い女性が6畳一間のアパートに住んでいる。 英語ではmicro-studio apartment と呼ぶそうだ。Amy さんの家も台所は広いが、カウンターを置くスペースはないという。
  そこで、この見出しが生きてくる。「ハバードおばさんだったら、日本の狭い台所をもっとうまく活用する方法を見つけただろう」と。


●伊藤みとり
  私(弘山)の同僚でパーパーバックを読むのが好きな人です。彼女から用例を教えて貰いました。作者のフランク・マコートはアイルランド系アメリカ人。貧しい幼年時代を描いた「アンジェラの灰」は映画にもなりました。
(1) Little Bo Peep
All right, Roger, but what the hell is Creative Writing and how do you teach it?
Ask Henry, said Roger, he did it before you.
I found Henry in the library and asked him how you teach creativewriting.
Disneyland, he said.
What?
Take a trip to Disneyland. Every teacher should do it.
Why?
It's an enlarging experience. In the meantime, remember one littlenursery rhyme and take it as your mantra.

Little Bo Peep has lost her sheep,
And cannot tell where to find them;
Leave them alone, and they'll come home,
Wagging their tails behind them.

That was all I got from Henry and, except for an occasional hallway Hi, we never talked again.
(p.449, "'Tis" by Frank McCourt, 1999 A Touchstone Book)

(2) Humpty Dumpty
From the back of the room a boy's angry cry. Fathers are such assholes.
And for a whole class period there's a heated discussion of "Humpty Dumpty."

Humpty Dumpty sat on the wall
Humpty Dumpty had great fall;
All the king's horses
And all the king's men
Couldn't put Humpty together again.

So, I ask, what's going on in the nursery rhyme? The hands are up. Well, like, this egg falls off the wall and if you study biology or physics you know you can never put an egg back together again. I mean, it's common sense.
Who says it's an egg? I ask.
Of course it's an egg. Everyone knows that.
Where does it say it's an egg?
They're thinking. They're searching the text for egg, any mention, any hint of egg. They won't give in.
There are more hands and indignant assertions of egg. All their lives they knew this rhyme and there was never a doubt that Humpty Dumpty was an egg. They're comfortable with the idea of egg and why do teachers have to come along and destroy everything with all this analysis.
(p.459, "'Tis" by Frank McCourt, 1999 A Touchstone Book)

●鳥山淳子:
  映画の用例です。
(148)ストーリー・オブ・ラブ
The Story of Us (1999.US)
  ブルース・ウィリスとミシェル・ファイファー共演のラブ・ロマンス。以下は、離婚の危機に陥ったベン(ウィリス)とケイティ(ファイファー)が、映画の最後で、お互いを許し合う場面。
KATIE:I think Dickens said it best. The Jack Sprat of it. He could eat no fat, his wife could eat no lean. But that doesn't really apply here, does it?
ケイティ:ディケンズがうまく言い当てていると思うの。ジャック・スプラットよ。彼は脂身が食べれなくって、妻は赤身が食べられなかった。でも、今のは本当は関係ないわね。
(木田さんより 11/3)

(149)マン・オン・ザ・ムーン
The Man on the Moon (1999.US)
 1984年に35歳でこの世を去った天才コメディアンのアンディ・カフマンをジム・キャリーが演じたドラマ。(映画の前半)
MASTER:I can't sell booze when you are singing "Pop goes the weasel".
ANDY:Booze. Just selling the booze all that matters.
マスター:おまえが「ポンとイタチが飛び出した」を歌ったら、酒が売れないんだよ。
アンディ:酒か。酒を売ることばかり。

  映画のエンディングの歌 "Man on the Moon" は、アンディ・カフマンに捧げられた歌で、R.E.M.というグループが歌っている。この歌から、映画のタイトルが付けられた。
SONG:If you believed, they put a man on the moon, man on the moon. If you believe there's nothing up their sleeve, then nothing is cool.
歌:信じるかな。人が月へ行ったよ。人が月へ。信じるかな。ぼくに隠しごとはない。クールじゃないね。
11/4

(150)ノー・プレイス・トゥ・ハイド
No Place to Hide (1992.US)
  ドリュー・バリモアとクリス・クリストファーソン主演のサスペンス・アクション映画。姉を何者かに殺され、ひとりぼっちになったティンセル(バリモア)は、一匹狼の刑事ジョー(クリストファーソン)の家にかくまわれる。姉の次に自分も命を狙われることになったティンセルは、お祈りをつぶやく。(映画の中ごろ)
JOE:Don't try to run while I'm gone. Because men can be anywhere. I'll be back in an hour. Clean that up.
TINSEL:Matthew, Mark, Luke, and John, the bed be blessed that I lie on, One to watch and one to pray and two to bear my soul away.
ジョー:死にたくなきゃ、ここを出るな。1時間で戻る。片づけとけ。
ティンセル:マタイにマルコ、ルカにヨハネ。我が寝床をお守りください。1人は見張り、1人は祈り、2人は我が魂を運ぶ。
【解説】子供たちが寝る前に捧げるお祈りの中で、もっともよく知られているもの。「夜の暗闇」を恐れる気持ちから発した古い呪文に由来するものだと言われている。
  イギリスの詩人チョーサーの"The Miller's Tale"(1387年)の中でも、このお祈りに言及がなされている。
(2000年11月6日関西テレビ放映)11/14

(151)ザ・タブー 暴かれた衝撃
Little Boy Blue (1998.US)
  ナスターシャ・キンスキー、ライアン・フィリップ、ジョン・サベージ主演のサスペンス映画。このタイトルがマザーグースからの引用。ただし、邦題はまったく違ったものになっている。
  映画の中にも、何度も Little Boy Blue が出てくる。まず、Little Boy Blue & Other Rhymes というマザーグース絵本が、謎を解く鍵となっている。また、ライアン・フィリップ演じる主人公ジミーは、 父親から Little Boy Blue と呼ばれていた。(映画の後半)
KATE:What are you at?
RAY:Look at him. Little Boy Blue has turned into a man. Isn't it right, Jimmy? I think we've got to tell him.
ケイト:何の話?
レイ:奴を見ろ。リトル・ボーイ・ブルーは、大人になったんだよ。そうだろ、ジミー。奴に言うべきだ。
11/20

(152)オズの魔法使い
The Wizard of Oz (1939.US)
  ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画。映画の後半で、ドロシーたちは、魔女から逃げ回る。最後に、槍を持った魔女の手下たちに囲まれたドロシーに向かって、悪い魔女がこう言う。(映画の後半)
THE WICKED WITCH:Well! Ring around the rosy, a pocket full of spears. Thought you'd be pretty foxy, didn't you?
悪い魔女:さあ! 追いかけっこはおしまいだ。ポケットいっぱいの槍だ。逃げられると思ったのかい?
(弘山先生より 11/20)

(153)ジェファソン・イン・パリ 若き大統領の恋
Jefferson in Paris (1995.UK)
 第3代大統領トーマス・ジェファーソンのフランス大使時代を描いた物語。以下は、アメリカ独立戦争時の「ヨークタウンの陥落」を描いた絵を画家が説明している場面。フランス人でありながら、アメリカ側で戦ったラファイエット将軍は、ヤンキー・ドゥードゥルを歌ったのだろう、という会話である。(映画の中ごろ)
FRENCH:Vous allez proprement, monsieur, en juant votre Yankee Doodle.
ALL:Yankee Doodle went to town, riding on a pony.
フランス人:「ヤンキー・ドゥードゥル」を演奏なさった?
一同:ヤンキー・ドゥードゥル、お馬に乗って町へ行った。
木田さんより (2000年11月16日BS11放映)11/21

(154)女になる季節
Greenage Summer (1961.US)
 英国から東フランスへ休暇に来たグレイ一家の子供たちは、エリオットと仲良くなる。以下は、エリオットの職業を当てようと、子供たちが占い唄を唱える場面。
(映画の中ごろ)
WILLMOUSE:Eliot, what do you do?
ELIOT:Well, let's see know. All...all sorts of things.
HESTER:I know how to find out.
WILLMOUSE:Count his buttons!
VICKY:Yeah! Count his buttons!
HESTER:Tinker, tailor, soldier, sailor, rich man, poor man, beggarman, thief!
WILLMOUSE:Thief! Thief!
ウィルムス:エリオットおじちゃんのお仕事って何?
エリオット:そうだなぁ。いろんなことをやっているんだ。
ヘスター:わたし、当て方を知っているの。
ウィルムス:ボタンを数えるんだ!
ヴィッキー:そうよ! ボタンを数えましょう!
ヘスター:鋳掛け屋、仕立屋、兵隊、船乗り、お金持ち、貧乏、乞食、泥棒
ウィルムス:泥棒だ!
【解説】
 花びらやサクランボのたね、カーディガンのボタンなどいろいろなものを使って職業を占う唄である。これは、アメリカ映画であるが、監督以下、俳優もすべてイギリス人であったため、イギリス版の唄が歌われている。アメリカでは 'Rich man, poor man, beggarman, thief. Doctor, lawyer, merchant, chief.'のほうが一般的。
(2000年12月4日サンテレビ放映)12/7

(155)サムボディ・トゥ・ラブ    Somebody to Love (1994.US)
 ハリー(ハーヴェイ・カイテル)は売れない俳優。ダンスホールでエージェントのジョージに声をかける。仕事を斡旋すると言って女優に近づき、抵抗されるとあわててジョージは逃げ出すが、これも唄どおりであった。(映画の中ごろ)
HARRY:Hey, Georgie Porgie.
GEORGE:Harry. How are you?
ハリー:やあ、ジョージ・ポージ
ジョージ:ハリー、どうも。
(木田さんより 2000年11月30日関西テレビ放映)12/13

(156)永遠の夢 ネス湖伝説
Loch Ness (1995.UK)
 ネス湖のネッシーを探しに来たデンプシー(テッド・ダンソン)は、湖の管理人がボートを漕ぎながら唄を歌うのを聞く。(映画の前半)
MAN:Row, row, row your boat, gently down the stream. Merrily, merrily, merrily, merrily, life is but a dream.
男:こげ、こげ、こげよ。ボートこげよ。楽しく、川下り。人生は夢にすぎない。

以下は、ネス湖畔でペンションを営むローラが、娘イザベラを寝かせつける場面。
(映画の中ごろ)
LAURA:Good night.
ISABELA:Sleep tight.
LAURA:Don't let the bedbugs bite.
ローラ:おやすみ
イザベラ:ぐっすりと
ローラ:虫になんか、かまれないようにね。
(2000年12月12日サンテレビ放映)12/19

(157)アンドリュー
NDR114Bicentennial Man (1999.US)
ロビウィリアム扮するロボットのアンドリューが、サー(サム・ニール)にジョークを教えてもらう場面。(映画の前半)
SIR:Just try something simpler. Knock, knock.
ANDREW:Knock, knock?
SIR:No, knock, knock. Knock is the sound of door.
ANDREW:Shall one get it, sir.
SIR:No, no. You say "Who's there?".
ANDREW:Who's there, Andrew?
SIR:Just "Who's there?".
ANDREW:One does not know, sir.
サー:もう少し簡単な例を。ノック、ノック。
アンドリュー:ノック、ノック?
サー:違う。ドアをノックしている音だ。
アンドリュー:開けましょうか?
サー:こう言うんだ。「誰かい?」
アンドリュー:誰かい、アンドリュー。
サー:違う。「誰かい?」
アンドリュー:存じません。
12/29

 他にも『恋するための3つのルール』 Mickey Blue Eyes (1999.US)のヒュー・グラント扮するマイケルのセリフにも、 butcher, baker...というのがありました。「マフィアだろうと何だろうと、誰にも邪魔をさせない。」という部分です。

●木田裕美子:
(1)『Loveシーズン』
 A Change of Season '80 米
挿入歌で、

All the king's horses
And all the king's men
Help me put me together again.

(2)『ボロワーズ』 
 The Borrowers '98 米
 Ten green bottles

(3)『ベイビー・モニター』 
 Baby Monitor: Sound of Fear '97 米
 Baa, baa, black sheep と「小さなくもさん」

(4)『グリーンズ:暗闇の殺戮部隊』   A Soldier's Sweetheart '98 米
Four and twenty blackbirds baked in a pie
(地雷を見ながら、「あらパイみたい」と言ったあとで、つぶやきました)

(5)『見習いサンタのクリスマス大作戦』(原題チェックしておりません)'99 米
クリスマスの12日間(学芸会の場面で)
〈クリスマスの季節をあつかった映画でも、いわゆるナーサリイ・ライムズが使われる例は少ないように思いますが、如何でしょうか。〉

(6)『ニュートン・ボーイズ』 
 The Newton Boys '98  米
 Mary had a little lambのパロディでしたが、メロディもおなじみのもののようには、聞こえませんでした。(歌っていたのは、イーサン・ホーク)

 他に、Row Row Row Your Boatの例がありましたが、映画のタイトルを調べておりません。映画の内容は、ボン・ジョビ扮する若者が、アメリカに入国してきた若い中国人の人妻に英語を教える時に、この歌を使っておりました。

 前回お知らせした分で、訂正をお願いいたします。
『ボディ・ハンティング 』 Chained Heat III '97 カナダ・チェコの中に使われていたナーサリイ・ライムズは、 Hush, little baby, don't say a word, Papa's gonna buy you a mocking bird でした。   

●原口しょう子:
アニメーションの中の用例です。
「TOM and JERRY」から……パート1
  「TOM and JERRY」の誕生は1940年。制作はMGMです。当初は主人公たちの絵柄も固まらず、現在良く知られているものとは顔だちも異なりますが、「第1期」と呼ばれる最初の19年間に、たくさんの名作が作られました。
  本来ほとんどセリフの無い(日本語吹き替え版は一部を除き、独自に台詞をあてたもの)「TOM and JERRY」では、アニメと音楽こそがそのまま言葉であり、だからこそ使われる曲のもつ意味が、よりいっそうの重要性を持っていたと思います。
  今回はそのごく初期の、40年代前半の作品から少し。ちなみにこの時期、全ての「TOM and JERRY」は、 後に日本でも有名なハナ・バーベラプロとして独立するWILLIAM HANNA と JOSEPH BARBERAによって監督されました。音楽は「ハリウッドで最も難しいバイオリン曲を作曲した」と言われるSCOTT BRADLEYです。

(1)「PUSS GETS THE BOOT」1940年
  記念すべきデビュー作。この作品のみジェリーにはまだ名前がなく、トムは劇中で「ジャスパー」という名で呼ばれています。追いかけられるジェリーの背後にひたすら流れるのは 「Three Blind mice」のアレンジ。さすがにこの曲はシリーズ全体を通して登場回数の多いもののひとつで、1942年の「Dog Trouble」でもオチのシーンに使われます。 またサブタイトルはシャルル・ペローの「PUSS IN BOOTS」をもじったもので、ここでもちょっとマザーグースと縁があるのです。

(2)「The Midnight Snack」1941年
  真夜中12時。冷蔵庫からチーズを盗み出すジェリーに、トムはいろいろ悪さをしかけますが……。自分の身体より大きい物を運んだり、上へ下へと駆け回るのはジェリーの真骨頂。 ここでは、一貫してジェリーのバックに何パターンもの「Hickory, dickory,dock」のアレンジが使われます。特に後半、ジェリーの反撃が始まってからは、アップテンポの小気味よい曲調となっています。

(3) 「THE LONESOME MOUSE」1943年
  ここではワケあって、ある目的のためにトムとジェリーが息の合ったチームプレイを見せるのですが、 その一環として「Twinkle,twinkle,little star」のメロディで日本の「せっせっせ」によく似た手遊びを披露します。この曲は遊び歌としても複数のバリエーションを持つとうかがっています。こんな遊び方もあったのでしょうか。

(4)「The YANKEE DOODLE MOUSE」1943年
  サブタイトルのとおり。時は第2次大戦中、直接の元ネタになったのは、この前年アカデミー3賞を受けたミュージカル 「THE YANKEE DOODLE DANDY」だそうですが、ジェリーの勇ましい突撃シーンのBGMとして「Yankee Doodle」が随所に出てきます。 本作も、「TOM and JERRY」初のアカデミー賞受賞に輝きました。

(5)「“PUTTIN'ON THE DOG”」1944年
  なぜか、犬の収容所の中での追いかけっこの巻。お互い怪しまれないように、なんと犬に化けようと奮闘するトムとジェリー。そのこっけいながら可愛い姿に、 「Oh where,oh where」のメロディが何度もかかります。サブタイトルバックにもこの曲のアレンジが使われています。


Tommy Thumb's Pretty Song Book (1744)を読む (5)

      夏目康子

5 The Old Woman.

There was an Old Woman,
Liv'd under a Hill,
And if she 'int gone,
She lives there still.

おばあさんがいました、
丘のふもと、
もしいなくなっていなければ、
まだそこに住んでいるでしょう。

  丘のふもとに住んでいるおばあさんを唄った、簡潔な4行詩です。 いなくなっていなければまだそこにいるでしょうという自明のことをうたっています。このような自明の命題は18世紀に流行し、 1810年の『ガートンばあさんの花環』にも同じような'Pillycock, pillycock' の唄が収録されています。
  3行目のgoneを普通は「いなくなる」と解釈しますが、「死んでしまう」と解釈することも可能です。後者に解釈すると、4行目のlives というのも「住んでいる」というよりも「生きている」というふうに、この詩全体の読みがよりシニカルなものになります。
  この詩の3行目の 'int の短縮形は文法的に正しくありません。Tommy Thumb's Song Book (1794版)ではi'n't と表記され、Mother Goose's Melody (1791版)ではisn't と表記され、 The Only True Mother Goose Melodies (1833)では、she's not と表記されています。このように初期のマザーグース集では文法的にみて不正確な表記もときどき見受けられます。後の時代の選者はこのような不正確な表記を直しつつ、選集を編んでいったようです。
  さらにこのThe Only True Mother Goose Melodies (1833)では、詩の後半に次のような2行が付け加えられています。

Baked apples she sold, and cranberry pies,
And she's the old woman that never told lies.

おばあさんは焼きりんごを売った、クランベリー・パイも。
そして彼女は決してうそをつかないおばあさんだった。

  焼きりんごやパイを売って生計をたてる現実的なおばあさんですが、うそをつかないといういささか教訓めいたところもあります。この唄は、このつけたしのない最初の4行だけのほうが、よりインパクトが強く、面白みもあります。
  オーピーの選集を見ると、'There was an old woman,/ Liv'd under a hill' で始まる唄がもうひとつあります。このおばあさんは、袋にねずみを入れて粉屋に送りつけます。 Mother Goose's Melody が文献初出の唄です。いずれにせよ、マザーグースには、生活力が旺盛で、少しのことではへこたれない、ひとり暮らしのしたたかなおばあさんが多く登場するようです。おじいさんの唄が少ないのと対照的に、 マザーグースに登場する多様なおばあさん達の生き様を検討してみるのも面白いかもしれません。
  この唄の挿し絵で印象に残るのは、アメリカのチャールズ・アダムズ『チャス・アダムズのマザーグース』(1967)で、外界が核戦争で滅び、シェルターのなかで猫と生き残ったおばあさんが編み物をしている絵です。現代社会を風刺した挿し絵になっています。


マザーグース日記(66)
藤野紀男
11月某日
  M&D Reeve (Wheatley, Oxford)から"Catalogue 51" が届く。Anne Andersonの "The Old Mother Goose Nursery Rhyme Book" (1928) が£325.00で、Beatrix Potter の "Appley Dappey's Nursery Rhymes" (1917初版) が£495.00で載っている。高すぎて、目を白黒させるだけだ。

11月某日
  文京区本郷のペリオディカヤポニカから"The Children's Mother Goose" が送られてくる。William Donahey のイラストにより、シカゴのThe Reilly & Lee Co. から1921年に出版されたもの。以前に北沢書店の目録に載っていて、説明文の中に 700 Rhymesとあったので探索して貰ったのである。たしか北沢書店は55,000円の値をつけていたが、送料込みとはいいながら今回49,000円も払うことになったので、期待はずれもいいとこだ。
  しかも、索引を数えたところ589編しかないのはどうしたことだろう? 内表紙にはタイトルの下に、 たしか The Complete Mother Goose Published in Amerika --- 700 Rhymesと記されている! 26.7cm×20.9cmで120頁しかないのだから、700編もの唄が収録されていると考える方がおかしいのだろうが・・・。

11月某日
  Cottage Books (Coleorton, Leicestershire) から "Catalogue 149" が届く。頁をめくっていたらRed Sky At NightRide A Cock Horse というタイトルが目に入ってきた。 前者は羊飼いの自伝で、後者は女性による農園生活回顧録だという。タイトルの付け方が実に面白いと思う。

11月某日
  Christopher Holtom ( St. Teath, N. Cornwall) から List 124 が届く。マザーグース集としては 100 Nursery Rhymes Illustrated (P. Edmonds, Pitman, 1925年位しか見つからない。しかし、 Eleanor FarjeonでSing For Your Supper という作品が出ている。

12月某日
  Wondeful Books By Mail (Oroville, California) から表紙がとれた Mother Goose Nursery Rhymes (1904の書き込みがある)が送られてくる。インターネットで見つけて、US$60.00を払って入手したもの。
  扉にはタイトルの下に The Only Complete Collection of All of Her Memorable Writings, Melodies, Alphabets, Tales, Jingles and Rhymes と記されていて、 出版社はシカゴのW. B. Conkey Company である。23.2cm×17.1cm のサイズで316頁あり、430編の唄が収録されている。ぜひ、完全なものを入手したいものだ。

12月某日
  ロンドンのRichard Platt から Christmas Crackers と題するカタログが届く。ミステリー、サスペンス、SF, ファンタジーなどを専門とする古書店だ。Rhys Davies の Rings On Her Fingers (1930) とAnthony Masters の A Pocketful Of Rye (1964)など欲しい本だが、前者が£75.00で後者は£95.00とあってはちょっと無理だ。

12月某日
  W. Fraser Sandercombe (Burlington, Ontario) から Mother Goose が送られてくる。やはりインターネットで見つけ、$170.00を送金して入手したものだ。
  表紙にはMother Goose とだけあり、背表紙でMother Goose Complete, 扉ではMother Goose's Nursery Rhymes, Tales and Jingles となっていて、 シカゴのRegan Publishing Corporation から出版されている。しかし、扉の裏にCopyright, 1902. by Hurst & Company とあるから、再刊本ということになる。20,3cm×13.8cmで416頁から成っている。
  目次を見るとHistorical からFireside Stories までの19に分類していて、J. O. Halliwaell の "The Nursery Rhymes of England" に倣っているようだ。 目次の前に6頁のHistory of Mother Goose があって、1719年に出版されたとされる Songs for the Nursery, or Mother Goose's Melodies for Children にも肯定的とも言える言及がなされている。


関西支部例会報告

12月3日全国大会
  待ちに待った大会が開催されました。遠くから朝早くかけつけてきていただいたり、前泊でお越しいただいたたりありがとうございました。一般の方が13人も参加いただいたようで大変盛況だったと思います。安藤先生と関西支部例会参加者中心で会場の準備等をすすめましたが、何とかつつがなく大会をサポートできたと安心しています。皆さんお疲れ様でした。
  鳥山先生、松村先生、夏目先生、安藤先生の発表、三宅先生の講演、追手門学院大学のマルチメディア、どのプログラムもマザーグースの文化の幅広さと豊かさを改めて感じるものばかりでした。大会で聞いたビートルズ、音楽、絵本の絵描き方、歴史など私達の例会の興味の対象になる事ばかりで、今年の例会もまた豊かに楽しくなっていくと期待しています。皆様ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。

  1月の例会は20日(土)渡辺茂「マザーグース童謡集」8,11,12を読みます。2001年のマザーグースカレンダーも完成させます。     (報告:信井)


トップページ