マサチューセッツ州ニューベッドフォ−ドで発行されているSunday Standard-Times 紙(1991年8月4日付)によれば,
来年の8月1日から6日まで同州フォールリバーにおいて`Lizzie Borden Conference'が開かれる予定という。
平野敬一先生が送ってくださった同紙の記事は,まず出だしに
- Lizzie Borden took an ax,
- Gave her mother forty whacks;
- When she saw what she had done,
- She gave her father forty-one.
というおなじみの押韻詩を引用しており,さらに,“Actually, she hit her stepmother, not
her mother, 21 to 23 times and her father 11. But it's not off
by much."と いうコメントも付けられている。
リジー・ボーデンの両親が,フォールリバーの自宅で死体で発見されたのは,今から99年前の1892年8月4日のことであり,この100周年を記念して
`Lizzie Borden Conference'が計画されているというわけである。
リジー・ボーデンは殺人容疑で逮捕されたものの,1893年の6月5日から20日にわたってニューベッドフォード上級裁判所で開かれた公判において無罪の判決を勝ち取っている。
しかし,リジー・ボーデンが有罪であるという心証を抱いている人は多かったそうで,
上記のような押韻詩が今日まで大人の間だけではなく子供の間でも伝わっていることはその証左の一つであるといえよう。
ただ The Faber Book of Comic Verse (1942年)には
- Lizzie Borden with an ax,
- Hit her father forty whacks,
- When she saw what she had done,
- She hit her mother forty-one.
という風に父母の殺される順番が逆になっている詞句が収められており,アガサ・クリスティー(1890−1976)もそういう順番で記憶していたのだろうか
After the Funeral (1953)の中でこちらの方−−ただし,hitではなくgaveになっているが−−を引用している。
もちろん A Century of Humorous Verse (1959年,J.M.Dent & Sons)のように アメリカ版の詞句を収めているものもあり,
イギリスでもこちらのほうも知られているらしいことは,次の様な最近の用例からもうかがわれよう。
- “No. I don't think so. It makes sense. It fits in with the
forensic evidence--it maybe even explains the two extra whacks."
- “ Lizzie Borden took an axe, and gave her..."
- (Murder at the Vicarage, by Jill McGown, 1988)
この押韻詩は,隠れたマザーグースの一つにまでなってしまっているので,
リジー・ボーデンの名前がイギリスやアメリカで忘れ去られることはまずないといってよいだろう。