Comparative Studies in Nursery Rhymes

by Lina Eckenstein (翻訳・注釈 星野孝司)

第12章 数え唄


 伝承遊戯の中には,問答をして,その答えの言葉を積み上げてゆくという形式をとっている例がいくつかある。そうした遊戯の一つ 〈クリスマスの十二日間〉(The Twelve Days of Christmas)は,通常,十二夜(Twelfth Day night) の日に集った面々で, ミンス・パイやトウェルフス・ケーキ*1 を食べる前に行なわれる遊戯である。各人が続けて, 日毎の「贈物」の名前を連唱し,同時に手をあげて自分の言った贈物が何番目かを示す。各人の答えはその前の者の答えも含んで (*段々増えて)ゆき,間違えた者には「罰金」がかせられる。(1894,Ⅱ,315) 


 〈十二日…〉に用いられる文句の最古の文献例は,E・パーソンによりサウス・ケンジントン博物館に寄贈された小版のトイ・ブック中の 一冊にあるものである。*2 それは――

 The first day of Christmas,         クリスマスの初めの日
 My true love gave me            愛しの君のくれたのは
 A partridge in a pear-tree.         梨の樹に住むウズラが一羽

 The second day of Christmas,        クリスマスの二日の日
 My true love gave me            愛しの君のくれたのは
 Two turtle-doves,and             キジバト二羽とね
 A partridge in a pear-tree.       梨の樹に住むウズラが一羽

――で始まり,続くのは,フランスのめんどり三羽,黒ツグミ(colly birds=blackbirds) 四羽,五個の金の指輪,卵を生んでる (a-laying)ガチョウが六羽,水面を泳ぐ白鳥七羽,乳搾り中の乙女が八人,太鼓を打ってる太鼓打ち九人,笛を吹いてる笛吹き十人, 踊る貴婦人十一人,そして十二日目はステップ踏んだ十二人の殿様(lord),である。


 同様の遊戯を,スコットランドでは〈師走の日々〉(The Yule Days)と呼び,その文句は十三句目まであって――

 The king sent his lady on the first Yule day    クリスマスの初日 妃に王様贈る
 A papingo-aye                   一羽のオウム
 Wha learns my carol and carries it away ?     たれそ伝えしお歌を忘る

 The king sent his lady on the second Yule day    クリスマスの二日 妃に王様贈る
 Two partridges,and a papingo-aye…(1870,p.42)   二羽のウズラに一羽のオウム

――で始まり。続けて,三日目に三羽の千鳥(plovers),四日目が灰色のガチョウ,五日目は三羽の星椋鳥(starlings), 六日目は三羽のゴシキヒワ(goldspinks=goldfinches),七日目は茶色の雄牛,八日目は素敵に卵を生む三羽のアヒル, 九日目が素敵に泳ぐ三羽の白鳥,十日目がアラビアひひ(Arabian baboon),十一日目には素敵に狩られる三頭の雄鹿, 十二日目には素敵に踊る二人の乙女,そして十三日目には小麦が三束贈られてくる。


 北フランスのカンブレ(Cambr市is フランドル地方レスコー河流域)でもこれを(*クリスマス ではなく新年と関連づけて)〈お年玉〉 (les dons de l'an)と呼んでいる。しかし,スコットランドの例とは異なり,これの贈物の数は日数と同じである。 すなわち一日目は一羽のヤマウズラ,二日目は二羽のキジバトで,以下三羽のモリバト(wood-pigeons),空を飛ぶ四羽のアヒル, ぴょんぴょんはねる五羽のウサギ,草間にひそむ六羽の野ウサギ,駆ける猟犬七匹,毛を刈られた羊が八頭,角の生えた牛が九頭, 大きな七面鳥十羽,でっかいハムが十一本,そして十二日目には小っちゃなチーズが十二個,という具合である(D.B,II,p.125)。


 フランス西部のものは暗唱ではなく歌として歌われているという。〈信心式目〉(Le foi de la loi) と呼ばれるその歌は, 「アベック ソォラニテ(avec solennit・に,すなわち,しごく儀式ばりに,もったいぶって唱えられるそうだ――

 La premièr'parti' d'la foi de la loi,  信心かなめのひとつとせ
 Dit'la moi,frère Grègoire.      教えてたもれグレゴリ神父
 −Un bon farci sans os−      「一は肉詰め骨無肉よ」

 La deuxième parti' d'la foi de la loi,  信心かなめのふたつとせ
 Dit'le moi,frère Grègoire.  教えてたもれグレゴリ神父
 −Deux ventres de veau,      「二つ子牛の胸の肉
 Un bon farci sans os. (B,・,p.271)   一つ肉詰め骨無肉よ…」

――以下には,骨つきの牛肉三固り,豚足四本,羊足五本,ヤマウズラのキャベツ添え六羽分,ウサギの串ざし七本,サラダ八皿, パンが九つ*3,満杯の酒樽が十個,胸の大きな美女十一人,刀を帯した十二人の騎士,が連ねられる。
 同様のコンセプトは,南仏・ランドック州のある歌の中にも見てとれる。ちなみに,この歌の贈物は五月はじめの十五日間 *4 のものとされる。 

  Le prumièdel mès de mai,      五月最初の一日は
  Qu'embouiarei àmai mio,     いとしい人に何をやろう
  Uno perdic que bolo,que bolo.   一羽のウズラ まるまる肥る
(M.L,p.486)

――そして同様にこのあと,二羽の小鳩,三羽の白鳩,空を飛ぶ四羽のアヒル,五羽のウサギ,六羽の野ウサギ,七頭の猟犬, 白馬が八頭,角の生えた牛が九頭,めーめー鳴く羊が十頭,戦帰りの兵士が十二人,十二人の娘,白い花輪が十三個,十四斤の白パン, ワインの樽が十五個,が続くのである。


 これらの歌の内容は,一見ただ事物を無秩序に連ねただけのようだが,より詳細に見てみると,ここに列されている「贈物」の大半は, 実際に「食べられる」鳥や獣によって構成されていることが判る。かつて十二日節の間には,その天気が特に注意深く観察された, それは次の年の十二の月の天候が,この十二の日々の天候に一致していると信じられていたためである。(1) おそらく,これら食べ物の羅列にも,同様のコンセプトが隠されているに違いない。たとえば,日毎の食物をもって, 月毎の代表的な行事を表わしたものなのではなかろうか。


 この〈十二日間…〉の遊びから派生し,その,問題に対する応答の早さや正確さに重点をおいたのが〈欠伸の大口与太ガエル〉 (The Gaping Wide-mouthed Waddling Frog)として知られる遊戯である。しかし,その文句には発音しにくい語, 覚えにくい語が意図的に選ばれているため,結果としてただ目茶苦茶に語を連ねただけのものとなってしまっている。 〈欠伸の大口与太ガエル〉の文句は,18世紀のトイ・ブックスにおいて初めてとりあげられた。 これをクリスマスのゲームの一つとして記憶している人も,まだ現存しているが,その遊び方はかの〈十二日間…〉と同じで, 円座を組み,問答を続けて文句を積み重ねてゆくものである。もちろん,間違った者には罰がかせられる。

  Buy this of me:   What is it?        これを買ってよ それなあに
  The gaping wide-mouthed waddling frog.    あくびガマグチよたよたガエル

  Buy this of me:   What is it?        これを買ってよ それなあに
  Two pudding ends will choke a dog,      かんぴょう二本で犬締める
  With a gaping wide-mouthed waddling frog.   あくびガマグチよたよたガエル

  Buy this of me:   What is it?        これを買ってよ それなあに
  Three monkeys tied to a clog,         あしかせかました三匹お猿
  Two pudding ends will choke a dog …     かんぴょう二本で犬締める
  With Gaping wide-mouthed waddling frog.    あくびガマグチよたよたガエル
  (*‘pudding end'の原義は袋詰めプディングの袋の口を絞る留め具=pudding string)

 そして,最後の問答の時の返答は,こんな具合になる――  

  Twelve huntsmen with horns and hounds,    十二の狩人 角笛 犬と
  Hunting over other men's grounds;        よそのお庭へ狩にいく
  Eleven ships sailing o'er the main,       船は十一 わだつみすべる
  Some bound for France and some for Spain,    あれはフランス これスペイン
  I wish them all safe home again;        航路ご無事ですべからく
  Ten comets in the sky,             空に十個のほうき星 
  Some low and some high;            そらほらたかく ひくくとび
  Nine peacoks in the air,            天に飛ぶのが九羽の孔雀
  I wonder how they all came there,        なぜに飛べるか分からずシャクだ
  I do not know and I don't care;         けれどもそんなの放下著(ホウゲジャク)
  Eight joiners in joiner's hall         指物(サシモノ) 親方八人衆
  Working with their tools and all.        手練手管で仕事中
  Seven lobsters in a dish,            七尾の大エビ 皿の上
  As fresh as any heart could wish;        なにせしんせん さあさ食え
  Six beetles against the wall          六匹壁を はう甲虫
  [or Six spiders in the wall ]
  Close by an old woman's apple stall;      リンゴの屋台に接近中
  Five puppies by our bitch Ball         うちのボールに仔犬が五匹
  Who daily for their breakfast call;       毎日毎朝ねだるはお乳
  Four horses stuck in a bog;           馬が四頭 沼はまる
  Three monkeys tied to a clog;          足かせかましたトリオのお猿
  Two pudding ends would choke a dog;      かんぴょう二本で犬締める
  With a gaping wide-mouthed waddling frog.   あくびガマグチよたよたガエル

 この滑稽な文句のきれぎれからは,わらべ唄集に見られるような唄が数多く派生している。たとえばハリウェルの収集にも, 次のような詩句が独個のわらべ唄としてとりあげられている――

  Eight ships on the main,           船は八そうわだつみはるか
  I wish them all safe back again;       航路ご無事にお願いどうか
  Seven eagles in the air,           空を舞うのは七羽のワシだ
  I wonder how they all came there;       なんで飛ぶかは知らぬはわしだ
  I don't know,nor I don't care.        知らねど気にするわしじゃない
  Six spiders on the wall,           クモ助六匹 壁におる
  Close to an old woman's apple-stall;     リンゴの屋台にしのびよる
  Five puppies in Highgate Hall,        ハイゲート-ホール に五匹のわんこ
  Who daily for their breakfast call;      ご飯の声すりゃ食べるよたんと
  Four mares stuck in a bog;          牝馬(ヒンバ)四頭 沼地にはまる
  Three monkeys tied to a log;         棒にくくったトリオのお猿
  Two pudding-ends will choke a dog,      かんぴょう二本で犬しめる
  With a gaping,wide-mouthed,waddling frog.   あくびガマグチよたカエル
  (1842,p.246//*co p.182,No.204 note)*5

 さらにハリウェルは,こうした文句からは完全に逸脱しているものの,数と物との関連・関係をいまだに残しているような唄も いくつかとりあげている。たとえば――

 One old Oxford ox opening oysters;      お一つ老いたる雄牛がお蛎(カキ)
 Two tee totums totally tired of trying    二人風癲(フーテン) ぶらぶら風来
  To trot to Tadberry;             不眠不休でふ〜らふら
 Three tall tigers tippling tenpenny tea;   三匹三毛虎(ミケトラ),みみちく召す茶
 Four fat friars fanning fainting flies;    四人弱腰,横に膨れた弱法師
 Five frippy Frenchmen foolishly        五人こてこてフランス人 釣りにゆくのは
  Fishing for flies;              ゴミの蝿
 Six sportsmen shooting snipes;        六つムキムキ武者衆連 シギ撃ちに
 Seven Seven salmons swallowing shrimps;   七尾の鮭が流れの中で生エビ呑んで
 Eight Englishmen eagerly examining Europe; 八人英人意気揚々勇んでゆくはヨーロッパ
Nine nimble noblemen nibbling nonpareils; 九人気のきく貴族たちクチャクチャするは赤リンゴ
 Ten tinkers tinkling upon ten tin       十(トオ)のいかけ屋 トテチンカラリン
  Tinder-boxes with ten tenpenny tacks;    十文ののぼりに鳴る火口(ホクチ)
 Eleven elephants elegantly equipt;      十一象(ゾウ)さん,しずしず身仕度
  Twelve typographical typographers      十二の植工,写植するお洒落に洒落た
  Typically translating types. (1846,p.111)*6   異国の字

 この種に属する,すなわち頭韻(alliteration)のみによって構成されているような唄には,このほかにも――

 Robert Rowley rolled a round roll round,  ゴロゴロ五郎がごろりと転んだ
 A round roll Robert Rowley rolled round;  ごろり転んだがゴロゴロ五郎
 Where rolled the round roll         どこでごろりとごろごろり
 Robert Rowley rolled round?    ゴロゴロ五郎がこーろんだ?
(1842,p.128//*co p.104)

――というものがある。この‘Robert Rowley'というのは,おそらくカミナリの異名である。というのも, イングランド北部で雷避けのまじない(charm)として唱えられる唄にも,この名前が見られるからである。*7

  Rowley,Rowley,Rattley-bags;     五郎さん,五郎さん,ごろごろ袋
  Take the lasses and leave the lads.   おなごにあげて 坊やは避けて
  (1876,p.15)

 また,これもこの類に属する唄である――

 Peter Piper picked a peck of pickled pepper;   唐の唐子が辛子の塩辛刈った
 A peck of pickled pepper Peter Piper picked;   辛子の塩辛刈ったが唐の唐子
 If Peter Piper picked a peck of pickled pepper,   辛子刈ったが唐の唐子なれば
 Where is the peck of pickled pepper        唐の唐子が刈りとりし
 Peter Piper picked? (1842,p.129//*co p.104)*8   辛子の塩辛いまいずこ?

 また,ハリウェルがその歴史を1674年にまでたどった由緒ある唄,《糸よりよじれて》(When a twister a twisting)には, フランス語による類例《なわやのなわない》(Si un cordonner accordant veut accorder sa corde)という唄があるというが, この英仏のどちらが古いのかについて,筆者はいまだ知らない。*9


〈第12章注〉
○原注
1 Frazer, 既述,1900, p.143 より‘Almanach des traditions populaires'(1883年1月1〜12) Rollandの報告を引用

○訳者補足

 原著者はこの章において〈欠伸の大口…〉を〈十二日間…〉の‘degraded form'としてまず位置付け,この後これをさらに他の 「数え唄」へと展開するのだが,OXDNRの解説(p.183) にもある通り,この両者には「クリスマスに行なわれる」ゲームである, という他にはさして意味深い共通点は認められない。ゆえに,現在はこのように,この種の数え唄を系統だてようという説は あまり行なわれていないことをまずご考慮のうえ,過去の一傍説として,以降の論をご照覧あられたい。

○訳者補注
*1 ‘mince-pie'は細かく刻んだ林檎・乾葡萄・スパイスなどを混ぜた具の入っているパイ。 ‘Twelfth-cake’は十二夜に作られる特別のケーキ。

*2  E.Pearson は既述の A.Pearson に同じと思われるも不詳。この‘diminutive toy-book'はOXDNR,p.122 に言う“Mirth without Mischief", published by C.Sheppard,c.1780 のことと思われる。

*3  原文‘…plates of (?chapitre)'。Ecken.は‘chapitre' の意味がつかめなかったようだが, これには白パンという意味がある。

*4 ‘the first fifteen days of May' 特別の祭礼を指すのかどうかは不明。 五月初めには天候を司る様々な地方聖人を祀ることが多い。そうした祭礼期間の一つか。

*5  原文8行目を‘Highga e hall,' とするJOH により修正。JOH,1842にはこの他にも‘Eleven comets in the sky' ではじまる variationが収録されている。

*6  原書は前4句と12句目のみ JOHより全詞を補足。

*7 ‘Robert Rowley'を雷とする説は他になし。JOH,OXDNR,ともに シャックリ止めのまじないの一つとする。

*8  原書第一句のみ JOHより全詩を補足。

*9  《糸よりよじれて》の全文は以下の通り――

When a Twister a-twisting will twist him a twist,
   For the twisting of his twist,he three twines doth intwist;
   But if one of the twines of the twist do untwist,
   The twine that untwisteth the twist.

   Untwirling the twine that untwisteth between,
   He twirls,with his twister,the two in a twine;
   Then,twice having twisted the twines of the twine,
   He twitcheth,the twice he had twined,in twain.
   The twain that,in twining,before in the twine
   As twines were intwisted;he now doth untwine;
   Twixt the twain inter-twisting a twine more between,
   He,twirling his twister,makes a twist of the twine.
(OXDNR,p.419)

――JOHの注によれば,これは数学・文法学者 John Wallis(1616-1703) が著書“Grammatica Linguæ Anglicanæ",1674(初版は1652) にのせた一文に端を発するという。OXDNR.p.419 および N.& Q.7thS.I.p.326 によれば,その元となったのはフランス語の以下のような文である。文中に見える 《なわやのなわない》はこのこと。

 Quand un Cordier,cordant,veult corder une corde;  縄ないが縄なえば縄なわれ
 Pour sa corde corder, trois cordons il accorde;    縄ないが縄なう縄をない合わせ
 Mais,si un des cordons de la corde descorde,     などなう縄じゃ縄ならぬゆえ
 Le cordon descordant fait descorder la corde.     なわぬ縄ではなえぬ縄がなえる


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