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About Mother Goose Society of Japan























マザーグースの用例(その他の本、マンガ、映画編)

マザーグース研究会の編集部に送られてきた用例です。


那須野玲子

 人間の一生に遭遇するさまざまな喪失体験を精神分析の見方を通して論じたアメリカのベストセラーの中に、 マザーグースの用例"Five Little Pig"がありました。

Freshmen Shari and Kit pig out, indulging in eating binges: Cake, cookies, a half-gallon of ice cream and such. In eating that mush they are trying to offer themselves some mothering comfort for their loneliness. They are two little piggies who wish they could have stayed home.

( Judith Viorst: Necessary Losses, 1987 )

両親や家族の保護を離れ、自己を確立して大人へと成長していく青年期に、 子供時代への別離の不安や悲しみがさまざまな行動となって現れる例のひとつとして、 上記の文が書かれています。
 赤ちゃんの足を順々に触って遊ばせる"Five Little Pigs"の歌は、 手元にある本で見ましたところ出だしの"This little pig..."のlittleが入っていないのもありますが、 最初の4行まではどれも同じでした。5 〜6行だけが、3通り見つかりました。

1 This (little) pig went to market,
2 This little pig stayed at home,
3 This little pig had roast beef, (meat)
4 This little pig had none,
5 And this little pig cried (said),
   Wee-wee (wee-wee-wee)
 I can't find my way home
5' ( All the way home )
5'' This pig went to the barn door,
 And cried "week, week" for more.

 なお、Iona and Peter Opie のThe Oxford Nursery Rhyme Bookには、上記のものの他に、5行とも言葉の違う、 しかし同じ構成の歌が2つ載っています。(そのひとつに、barn doorの出て来るものがありますので、 両者が混じり合ったものとも考えられます。)

(会報No.17. 1989.11 より)


藤野紀男

(1)London Bridge is falling down
 「英雄時代の鉄道技師たち」(菅建彦 山海堂 1987)を読んでいたところ、テムズ川に関する箇所で"London Bridge"の唄に言及しているのを見つけました。ほんの一寸とですが・・・。

       三章 世界最初の水底トンネル

  ロンドンの歴史は遠くローマ時代にさかのぼるが、そもそもここに都市が発展した理由は、この地が古代の技術で テムズ川に橋を架けうる最下流の場所であり、また潮の満ちひきの影響を受ける限界点で、外洋からの船が遡行しうる 最上流地点であったからである。
  「London Bridge is falling down.....」の童謡で有名なロンドン橋は、最初にローマ人がほぼ現在位置に木橋を架け、 十二世紀頃には石橋となったのであるが、長い間、この橋がロンドンにある唯一のテムズ川の橋であった。

 テムズ川と言うと日本人にもこのマザーグースが思い浮かんでくるーーそれほど日本人にも知られているーーのか、 参考にした本の中で言及されているのか・・・。たぶん、後者だと思いますが。
 テムズ川と聞いただけで、イギリス人には"London Bridge"の唄がさっと浮かんでくることは、 日本人が日本橋と聞いて`お江戸日本橋、七つ発ち・・・’の唄を思い浮かべる以上であることは、間違いありません。

(会報No.18. 1989.12 より)


 那須野玲子:

        マ ザ ー グ ー ス ・ フ ァ ン タ ジ ー

 5月7日(日)夜8時からのニッポン放送で「マザーグース・ファンタジー」というラジオ番組がありました。 谷川俊太郎訳のマザーグース3編を3人の脚色家が3つの物語に仕立てたオムニバス・ドラマでした。

 第一話「どんぶらこっこ どんぶらこ」(Rub-a-dub-dub)、第二話「ばらのはなわをつくろうよ」(Ring-a-ring o' roses)、 第三話「くぎがふそくで ていてつうてず」(For want of a nail, the shoe was lost)が、 各物語のテーマになっているマザーグースです。

 第1話は、かみさんにかくれて賭トランプをやり、身ぐるみすってしまった肉屋、パン屋、ローソク作りの三人男が、 怒ったかみさんたちに隠れていた桶もろとも川へ投げ込まれる話。第2話は、太陽の黒点の観測に夢中になった時計職人が、 当時ヨーロッパ一帯を襲ったペストの看病隊に自分の代わりに娘を出したが、娘は多くの村人と共にペストに倒れて死んでしまう。 それを嘆いた時計職人が、遺書として残したのが、このわらべうただと言うもの。第3話は、戦時下、飢えに苦しみながら 生き残っているサーカスの動物たちが、月からきたと言う空中ブランコの女性スターと一緒に月へ飛び帰るのに一匹だけ連れて行って 貰えることになった。ブランコを直す釘の持ち数をめぐって動物たちは争うが、たった一本しか貰えなかった馬が、 釘は一本でいいのよと選ばれて月へ飛んだ話。

 というように、3人の脚色家の自由な解釈と想像力による創作ドラマです。どの物語にも、三つの詩が、 ドラマの進行と共に音楽入りで何回か効果的に唄われていました。一応、録音もとってあります。

(会報No.24. 1990.6 より)


村山和子:

先日(12月8日頃)TV1チャンネルで,シャーロック・ホームズのスパイ追求映画を見ていましたら, Humpty Dumptyの唄が出てきました。

All the Queen's horses and all the Queen's men

Couldn't put Humpty together again.

といったセリフで,KingがQueenに替えてありました。時代に合わせてあるのでしょうか。とにかく, いかにイギリス人の心の意識下にナーサリー・ライムが深く入りこんでいて,ちょいちょい顔を出すか, ということを感じさせられました。

(会報No.31. 1991.1 より)


藤野紀男:

ハンガリー生まれのミケシュが,マザーグースの重要性を述べている事は,『英米故事伝説辞典』(冨山房)に 転載紹介されていることで,知られています。その部分の原文を入手しました。子供から教わったというところが面白いですね。

`Daddy, who is Marjorie Daw?'
`Maybe one of the little girls upstairs. I've never heard of her.'
The point is, of course, that I had never heard an English nursery rhyme: I started in to learn them as a father.
Suddenly I became very self-conscious about this painful gap in my upbringing. What's the use of knowing the Ode to a Grecian Urn if you havenever heard Twinkle, twinkle little star ? Is it possible to enjoy the Four Quartets if you never enjoyed Round and round the mulberry bush ?
So I took the lessons I was getting from my daughter very seriously. Gradually I learnt all the nursery rhymes.  I became a regular listener to the Listen with Mother' progaramme (for children under five).

( How to Unite Nations, by George Mikes)

ジェームズ・カーカップ,ピーター・ミルワードという英国人ですらマザーグースの重要性を断言しているのですから, マザーグースには日本人ももっともっと注目しなくてはならないと思います。

(会報No.38. 1991.8 より)

  ※管理人@フィドル猫註・ミケシュ(George Mikes; 1912〜1987)は、イギリスに帰化したジャーナリスト、社会批評家。 『これが英国ユーモアだ』(TBSブリタニカ、1981)、『円出づる国ニッポン』(南雲堂、1972)などの著作がある。


木田裕美子:

映画の中のマザーグースの用例です。良く聞き取れなかったところもありますが,報告します。

(1) "Thursday's Child" ’83 米

ロブ・ロウ主演。高校生が心臓の移植手術を受けるために入院中,そこで18才の誕生日を迎えます。 母親からのプレゼントに"Happy Birthday, Thursday's child"とあり,自分は「水曜日に生まれたと思ってた」 と尋ねると,母親が"Wednesday's child is fullof woe,...Thursday's child has far to go."と希望を託して, 引用していました。

(2) "The Turning Point" (愛と喝采の日々) ’77 米

シャーリー・マクレーンとアン・バンクロフトの主演。二人は若いときプリマドンナ・バレリーナを目指した。 シャーリー・マクレーンの方は結婚し子供をもち,また,その子供がバレリーナを目指している。アン・バンクロフトは, プリマドンナであるが,年齢と孤独を感じている。シャーリー・マクレーンと昔の知人が出会ったときに,`Roses are red'をもじって(?)`Divorce is bomber, Violets are blue, Chaikovskii is great, and so are you.'とありました。

(3) "Good Morning, Babilonia" '87 伊,仏,米

映画草創期のハリウッドに渡ったイタリア人建築職人ニコラとアンドレアの兄弟の話。アメリカに着いたけれど, すぐにはよい職に就けず,英語を覚えなければと,意気をふるい立たせる時に,`One, two, Buckle my shoe; Three, four, Knock at the door....'とありました。

(4) "How Many Miles to Babylon?" ’82英

ダニエル・ルイス主演。冒頭の部分で`How many miles to Babylon? Four-score and ten. Can I get there by candle-light? Yes, and back again."とありました。

(会報No.43. 1992.1 より)


●那須野玲子:

 Jilly Cooper著"Class"(1979年初版の1989年版)を仲間と読書会で読んでいます。 今なお残る英国社会の階級について、さまざまな角度から例を挙げてユーモラスに描き、論じている興味深い本です。
 その中に、マザーグースについての記述、引用や替え唄が見つかりました。まず、2箇所をお知らせします。

(1) Upstairs Downstairs
 60年代の平等思想の強化とともに、階級間の格差は縮まったが、社会階級はしっかりと生きており、 人々の心の中に生き残っているという序章の一部です。

Added to this is the collosal success of those television serials and plays about the upper classes such as Upstairs Downstairs, Thomas and Sarah, Flambard and Rebecca, not to mention the royal sagas. The fact that they have all been set in the past --- because nostalgia excuses everything, enabling people to click their tongues over the outdated inequalities, yet guiltily enjoy the sense of hierachy --- must betray a hankering after some kind of social pecking order.
( Ibid. p.11, Introduction )
 よく知られているマザーグース'Wee Willie Winkie'や'Goosey, goosey, gander'に出てくるUpstairs (and) Downstairsと言う語句が、上流階級を題材にしたテレビの連続劇か演劇の題名となっていることが判ります。 'Upstairs Downstairs'がどのような筋立てのドラマなのか判りませんが、(どなたかご存じの方がありましたら、 教えて下さい)この題名は、社会階級の上下を、あるいは階層を上下することを象徴的に表しているような感じがします。

●編集局注:上記のUpstairs, Downstairsがどんなドラマか、パソコン通信を使って聞いてみました。 ドイツの大学で英語を教えているという、デニスさんというイギリス人が答えてくれました。
"Upstairs, Downstairs" was a TV serial that was concerned with the lives of a moderately rich family (in nineteenth century England I believe) and their servants. "Upstairs" refers to the family and "Downstairs" to the servants since, presumably, the kitchens and other such places of work were usually on the ground floor. There is also, of course, an echo of "Goosey goosey gander."

 デニスさんのコメントのよれば、Upstairsは上流階級の家族、Downstairsは召使いがいるところを指しているそうです。

(2) Little Jack HornerLittle Miss Muffit
 これは、イギリスの子供たちの健康管理、食生活が階級によって違うことを述べている章の終わりの部分です。

Upper-class children are taught nursery rhymes by their nannies and know them all by the time they're eighteen months, giving them a vocabulary of about 500 words. Traditionally a lot of nursery rhymes chronicle the activities of their forebears anyway. Little Jack Horner pulling out a plum, for instance, refers to the fat picklings culled by the Hornor family during the dissolution of the manasteries.
Sharon Definitely-Disgusting only knows television jingles. In a recent quiz at a state school none of the eleven-year-olds could say what Little Miss Muffit sat on.
( Ibid., p.67, The Regime)

 上流階級の子供たちは、ごく幼いときに育児係(nanny)にたくさんのナーサリーライムを教わり、 一方、労働者階級の子供たちは余り知らないということが述べられています。Sharonは、ユーモラスに名付けられた労働者階級を 代表する一家であるDefinitely-Disgusting家の娘の名前です。
 Little Jack Hornerの唄は、ここにも触れられているように、ヘンリー8世時代、修道院の領地が没収されていた頃、 トマス・ホーナーがパイに隠されていた領地権利書を抜き取って私腹を肥やしたという史実を詠んだと伝えられています。(藤野紀男『マザーグースの英国』、渡辺茂『マザーグース事典』などを参照)

(会報No.75. 1994.9 より)

  ※管理人@フィドル猫註・ この本は翻訳があります。『クラース イギリス人の階級』渡部昇一訳、サンレイ出版、1981


鳥山淳子:

10月8日TV放映の「ホームアローン」にマザーグースがでています。
映画【ホーム・アローン】より Home Alone (1990.US)
 心もはずむクリスマス。シカゴに住むケビンの一家は、おじさんの住むパリへ、家族・親戚そろって出かけていくことになった。 ところが、出発の朝、停電で目覚まし時計がならなかったことから、飛行機に乗り遅れそうになる。パパとママは必死になって 準備をして何とか飛行機に乗り遅れそうになってあわてた両親は、一番年上の姉に子どもたちの人数を確認するように頼む。 そのときにこのマザーグースがでてくる。いかにも、クリスマスの時期にぴったりの歌だ。

 On the first day of the Christmas,
 my true love sent me a partridge in a pear tree

という歌でon the second day...と、どんどんつみあげて歌って行く歌。[大人が?人、子供が?人、 そして梨の木にヤマウズラ。]と姉が答える場面です。

(会報No.76. 1994.10 より)


●那須野玲子:

 再びJilly Cooper著 Class からの用例をお知らせします。
(1) Tinker, Tailor, Soldier, Sailor
 イギリスの子供たちが、成長に伴って教えられたり学びとったりする様々なこと、fact of lifeの知り方は、礼儀、慣習、 社交などにも階級差が現れることを述べている章の一部です。

Middle-class children put cherry stones on the side of their plate with their spoon and chant, Tinker, Tailor, Soldier, Sailor, Rich man, Poor man, Beggarman, Thief. Upper-class children conceal the journey from mouth to plate with curled fist and say Army, Navy, Law, Divinity, Independent, Medicine, Trade. The working-class only eat cherries out of tins of fruit salad with the stones already removed.
(Ibid. p.71, Growing up )

 このマザーグースの唄、私の手持ちの絵本には一冊を除いて載っていませんでした。Iona & Opie の The Oxford Nursery Rhyme Book ではV章A Little Learning の中にCounting Cherry Stonesという項目があって、 載っています。
 中流階級の子供が唱えるというTinker, Tailor, Soldier,...は、上記と全く同じものが載っていますが、 上流階級の子供のArmy, Navy, Law, ...の方は、用語や順番が少しづつ違っていますが、ほぼ同じ次の二つが書かれています。

Army, Navy,
Medicine, Law,
Church, Nobility,
Nothing at all.

Army, Navy,
Peerage, Trade,
Doctor, Divinity,
Law.

 また、この二つを合わせたような、2行ずつ韻を踏んだ次のような面白いものもあります。
Soldier brave, Sailors true,
Skilled physician, Oxford Blue,
Learned lawyer, Squire so hale,
Dashing airman, Curate pale.

 The Oxford Nursery Rhyme Book のCounting Cherry Stonesの項には、これらの他に、次の二つが載っています。 上記のものを含めてすべてに職業や身分などが詠み込まれているのが大変興味深く思われます。

A LAIRD, a lord,
A cooper, a thief,
A piper, a drummer,
A stealer of beef.

Lady,
Baby,
Gipsy,
Queen.
 
 さて、Jilly Cooper の本でも、Opie夫妻の本でも、これらが元来サクランボの種を数えるときに唱えられている 一種の数え唄であることが分かります。私の持っている絵本の中で、Ladybird BooksのOne Hundred Nursery Rhymes に、 サクランボの種を並べて数えている可愛い少女の絵とともに、 上述のマザーグースの二つを合わせて一続きにしたものが載っていましたので、あわせてお知らせします。

(会報No.77. 1994.11 より)


●那須野玲子:

(1) Little Bo-peep has lost her sheep
 ピーナッツのマンガの中に、Little Bo-peepが登場していました。
 主人公はスヌーピーのお兄さんのスパイクで、アメリカの荒野で孤独に暮らしています。訳者の谷川俊太郎さんが、 *ボーピープは、マザーグースに出てくる羊を飼っている子ども、と注を付けています。
 出典は、A PEANUTS BOOK featuring SNOOPY 13 p.91, Charles M. Schulz, translated by Shuntaro Tanikawa, KODANSHA SHOTENから取りました。

(会報No.82. 1995.4 より)


●大道友之:

(2) There was an old woman who lived in a shoe
 The Japan Times ( March 26, 1995)に靴の家のイラストが載っていました。そのキャプションが、 The rent is reasonable but it costs me a bomb in Odor Eaters.となっていました。
 垣根越しにこの靴の家の奥さんが、訪問者に話しているセリフです。Odor Eatersというのは、 たしか臭い匂いを取る「消臭剤」ですね。日本語に訳せば、「この靴の家の家賃はまあまあだけど、 消臭剤にお金がかかるのよ」ぐらいでしょうか。何か適訳があれば、お知らせ下さい。

(会報No.82. 1995.4 より)


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