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About Mother Goose Society of Japan























マザーグースの用例(児童文学・児童書編)

マザーグース研究会の編集部に送られてきた用例のパート2です。


平野美津子

One misty, moisty morning

 Roald Dahl作"Charlie and the Chocolate Factory"という児童文学があります。 その中で主人公のCharlieを紹介したところで、

   This is Charlie.
How d'you do? And how d'you do?
And how d'you do again?
 とありました。これは、"One misty, moisty morning, / When cloudy was the weather, ..."で始まる マザーグースの最後の所の引用でしょうね。

(会報No.17. 1989.11 より)


高橋正人

(1)子供(小学校低学年と思われる)向けの辞書の"fall"の項は、Humpty Dumptyが説明役に登場していました。 The American Heritage Picture Dictionary, Houghton Mifflin Company, 1986, p.35) その部分のコピーを載せます。

(2)これは用例ではなく、関連する事項のつもりです。確か、Banbury Crossという地名が出てきますが、 そこで作られたのが起源でいまだに有名なのがBanbury cake(s)だそうです。simile(直喩)をあたっていたら、出てきました。

"This town," said the Doctor,...,"is famous for its buns. The Wendlemere buns are almost as well known as the Banbury cakes or the Melton Mowbaray pies."

(Hugh Lofting: Doctor Dolittle's Caravan, Puffin Books, 1981, p.65)

(会報No.18. 1989.12 より)


阿部伸子:

  マザーグース研究会に席を置きながら、会報を読むだけで、一度も情報を提供することなく名ばかりの会員となっていました。 今年こそは、と奮起してまずはペーパーバックをがんばって読むことにしました。そしたら、 次のように"Old MacDougall had a Farm"の替え歌として、こんなものがありました。

"Can you?" said the dragon. "Good. We'll sing each other songs on the way."
"He struck another note on the piano.
"Like this," he said, and began to sing, in a high, reedy voice, to the tune of "Old MacDougall had a Farm":

"Old R. Dragon had a ride
In Fred and William's van-o!
And on that ride he sang some songs,
With a toot-toot here,
And a honk-honk there,
Here a toot, there a toot,
Here and there a honk-honk!"

(Dragon in Danger by Rosemary Manning)

 なお、この元歌のタイトルは、ふつう"Old MacDonald Had a Farm"の筈ですが、ここではMacDougallになっています。 様々な形があるのでしょうか?

(会報No.20. 1990.2 より)


高橋正人:

 また,ドリトル先生シリーズです。ずっと前に読んで,「比喩」の項目にいれっぱなしでした。サーカスのmanagerが, ドリトル先生をからかう場面です。

"And this, Ladies and Gentlemen, is the original Humpty-Dumpty --- the one what gave the king's men so much trouble. Pay your money and come in! Walk up and see 'im fall off the wall! "

( Hugh Lofting; Doctor Dolittle's Circus, Puffin, 1977, p.17)

(会報No.26. 1990.8 より)


鈴木直子:

 最近読んだ児童書からの用例を紹介します。
●コールの王様

 「あの大叔父さんの名前は?」タビサはたずねた。
 「どう思うかね、ジャネット?」ガイ大叔父さんはスカラーのおばあさんに聞いた。「別にかまやせんだろうねえ・・・」
 「コールですよ!」スカラーのおばあさんがタビサに教えた。「コールっていう名前で、 バーナビー大叔父さんのお気に入りの弟だったのよ。」
 「コール?」タビサが叫んだ。「コールってーー変わった名前じゃない?」
 「童謡のコールの王様のコールよ。」スカラーのおばさんが言い、ガイ大叔父さんがあとを引き継いだ。
 「まだずいぶん若いうちに家出をしてな、南の方の川で溺死したんだ。もう何年も前のことだもんで、 今は長いことあの子のことをまるっきり考えずにいることがしじゅうあるのさ。」
         児童書(マーガレット・マーヒー『足音がやってくる』岩波、1989)

●ライオンと一角獣

 「お乗りください、主教さま。」と、女のひとはいった。「あなた方のうち、半数は、おつれできます。」
 主教といく人かが、ピカピカ光る金でつくられていると思われる、そのそりに乗りこんだ。そりの上には、 まっかな毛布や不思議な動物の毛皮などが、山のように積まれていた。主教たちが、居心地よくそれに包まれると、女の人はいった。
 「わたしの動物たちが、もう一つのそりの動物たちとけんかをしないうちに出かけなければなりません。」
 そして、ライオンに声をかけると、ライオンは、ほえながら、走りはじめた。、、、
 ケイは、そのライオンは、すこしこわかったけれど、最初のそりがすっかり気にいっていた。ところが、 二ばんめのそりが一角獣にひかれているとわかったときには、どんなに喜んだろう。
 「ああ、一角獣だ!」と、ケイはいった。「みんなは、いつも、一角獣なんて、ほんとはいないっていってたのに。」、、、
 「ああ、あなたの一角獣は、なんて美しく飛ぶんだろう。」と、ケイはいった。
 「つまり、ケイ、一角獣たちは、ライオンに負けるのが、いやなのだよ。」と、ハーンはいった。
 そこで、ケイは、自分たちが、ライオンに追いついたら、いったいどうなることかと、ちょっと心配になった。しかし、きっと、二人の御者たちは、血を流すような大事件にはならないよう、うまくやるのだろうと思った。
         (ジョン・メイスフィールド『喜びの箱』評論社、1973)

●Mother, may I go and bathe?
 ナタリー・バビット作『アマリリス号ーー待ちつづけて海べで』(福武書店、1992年)児童書
 夏休み、孫娘を母のところへ預けに来た息子が、娘を心配して母とかわす会話の中にマザーグースが出てきます。

 「お母さん」男は思いつめたような声を出すと、老婆のところにもどっていった。
「ジェニーのことを、くれぐれもお願いしますよ。あの子はわたしたちの宝なんです。あのこにもしーー」
 「『服はきちんと木にかけて、水に入っちゃいけないよ』」老婆は頭を左右にふって調子をとりながら、歌ってみせた。 それから馬鹿にしたような口ぶりでいった。「心配するんじゃないの。海には入らないから。お父さんが亡くなる前は、 おまえもこんなに臆病じゃなかったのにねえ」
このマザーグースは、元唄が

Mother, may I go and bathe?
Yes, my darling daughter.
Hang your clothes on yonder tree,
But don't go near the water. 

かあさんおよぎにいっていい?
いいですよ かわいいむすめ
むこうのえだにきものをかけて
でもけっしてみずにはちかよらぬこと
(谷川俊太郎訳)

 平野敬一氏の解説によれば、おとぼけ問答の唄で、ヒッコリーの木が登場するところから、 アメリカ産の唄と見なされているという。Ray Wood編のThe American Mother Goose (1938)が初出。

(以上、会報No.53. 1992.11 より)


●鈴木直子:

Eeny, Meeny, Miney, Mo 

子ども用の絵本で、『モグラのイーニーがみつけたもの』(ジェーン・ヨーレン文、キャスリン・ブラウン絵 こだまともこ訳  冨山房)があります。この書名を見て、ピンときました。これは、原題が"EENY, MEENY, MINEY, MOLE"で、 マザーグースの"Eeny, meeny, miney, mo..."ではじまる鬼決め唄のもじりです。

お話は、3人姉妹のモグラの末っ子イーニーが、地下でミミズやムカデやヘビから「光」「昼」「夏」などの話を聞いて、 びっくりしたり、不思議に思ったりします。それを2人の姉さんたちに話すのですが、2人とも耳を貸さず、 「そんな人と付き合っちゃいけません!」とか言うのです。 

でも、イーニーは自分の好奇心だけで地上に出てみて「春」の「昼」の「光」を見て感じて感動して地下の姉さんたちに 話しに帰る・・・というものです。姉さんたちの名前は、当然一番上がマイニー、真中がミーニーです。

(会報No.63. 1993.9 より)


●鈴木直子:

(1) Ring-a-ring o'roses
 ジョーン・エイキン作『ぬすまれだ夢』(くもん出版、1992、9、12発行)という短編集の中の「探しものー足をひと組」 という作品に、パブの名前として<リング=オ=ロゼス>という店が登場します。生意気な男の子カルは、テニスが得意なのですが、 考える前に手が動くような性格で、ある日考えなしにラケットで蝶をはたいてしまいます。すると女神が現われて、 なぜそんなことをするのかと問うのですが、カルが口答えをするたびに、片足ずつもげて、それぞれ勝手に出かけてしまう、 というファンタジーです。

 ジェニーはバレリーナの足をひと組欲しかったのですが、お母さんが、「ダメです、ペットに出来るのはカナリアかウサギくらいですよ」と言いました。「それに、足のもちぬしが、返してくれと言ってきたらどうするの?」
 ある友だちは、カルのお父さんに、カルの片足が<リング=オ=ローゼス>という名前の地元のパブに毎晩出演している、と知らせにきました。
 「バーのカウンターの上をはでに踊りまわるんだ。大受けで、客がおしよせているよ」
     (ジョーン・エイキン作『ぬすまれだ夢』)

(会報No.70. 1994.4 より)

(2) What are little boys made of?
 『ママがたまごをうんだ』バベット・コール作・絵、ほるぷ出版、1994年1月発行(原著1993年)

 両親が息子と娘に、子供がどのように生まれるかという話をするのに、いくつものおとぎ話をする一つとして、 マザーグースのWhat are little boys made of? が出てきます。他にも種をまくと赤ん坊がなる草が生えて来るだの、 恐竜が連れてくることもあるだの、荒唐無稽な話をします。それに対して、子供たちの方が笑い出して両親に科学的な説明をし、 親の方が赤面するという、ユーモラスな性教育の絵本になっています。著者のユーモラスなイラスト付きです。

 「おんなのあかちゃんはね さとうとこなとすてきなもの ぜんぶあつめて できるのよ」と ママはいった。

 「おとこのあかんぼうは なめくじとかたつむりと こいぬのしっぽから できるんだ」と パパはいった。

(会報No.71. 1994.5 より)


●鈴木直子:

児童文学とミステリーから2点ずつ報告します。
児童文学 (1) The owl and the pussy cat went to sea (フクロとコネコ 海に出た)
(2) Three little kittens (3びきのこねこ 手袋なくした)

「トン、トン。」こんどはポーロがいいました。
「どなた?」と、マルコがききました。
「ポーロですよ。」
「どこのポーロさん?」
 ポーロはどう返事をすればいいのかわからず、だまってしまいました。しばらくして、ようやく「ぼくだってば。」といいました。
 マルコはあきれて、目をつぶってしまいました。
「もうやめにしよう。」
 こんどは、詩をあんしょうすることにしました。「フクロウとネコ」や「三びきの子猫」などです。そして、 知っている詩をぜんぶあんしょうしてしまったころ、また横のドアがあきました。

児童文学 

『ネコクラブ3つのなぞ』(フィリス・レイノルズ・ネイラー作、講談社p.41, 1994年; 原書The Grand Escape, Phillis Reynolds Naylor, 1993)

 マルコとポーロという2匹の飼い猫が家出を決行し、庭先で飼い主をやり過ごすため、潜伏場所でひまつぶしに暗唱する詩として 登場します。
 (1)は以前、C.マクラウドの作品にも出てきたのを報告しましたが、元はエドワード・リアの詩で、 マザーグースになりつつあるもの。猫の話なので、猫の出てくるマザーグースというわけです。この後で出てくる暇つぶしのお話も 「長靴をはいたネコ」などです。

(会報No.83. 1995.5 より)


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